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この人もワグネリアン!!!
−祝! 米国国防総省主催国際会議 部門別最優秀論文受賞−

  2009年6月、米国国防総省主催の指揮統制研究・国際会議がワシントンD.C.で行われた。
この国際会議において、一人の日本人が初めて部門別で最優秀論文を受賞した。
工学部を卒業されたワグネリアン、山口浩氏(1963卒・Cl)だ。
山口氏が教授を務める中央大学研究開発機構に、三田会会長の若尾裕久氏と共にお話を聞きに伺った。

インタビュアー 小野 彩子(2004卒・Vn)



―学生時代はどんな生活でしたか?
幼い頃はヴァイオリンをやっていたが、親類にワグネルでクラリネットをやっていた人がいることもあって、大学に入る前から「ワグネルにどうしても入りたい!!」と思っていた。入学後は、4年間毎日クラリネットの練習に没頭していた。

―ご卒業後は?
卒業後は、楽器を演奏しなくなってしまった。
入社した会社では、コンピューターの基本ソフトウェアの開発などを行い、セキュリティ技術研究に従事していた。

コンピューターが世の中に普及し始めた頃から、最前線でその開発に関わっていた山口氏。
退職後も研究を続けたいという志を常に持っていた山口氏は、勤務する傍ら、1999年に中央大学大学院に社会人入学。2004年に学位を取得した。


―現在はどのような研究をなさっているのですか?
安全・安心な電子社会を実現するために、暗号理論を使ったセキュリティ技術の研究をしている。

―今回米国国防総省の国際会議で発表された論文のテーマについて教えていただけますか?
「これからの知識社会の発展を目指して ―オーケストラ組織に学ぶ―」というテーマで論文を執筆し、ワシントンD.C.に赴き、国際会議でプレゼンテーションを行ってきた。

―今回の論文を書かれた背景にはどのようなことがあったのですか?
従前より、P. Druckerが提唱する知識社会のあり方に関心があった。また、JAO(日本アマチュアオーケストラ連盟)主催の日本マスターズキャンプで、長岡京室内アンサンブル音楽監督である森悠子氏によるレクチャーに強い関心を持ち、いつか論文にしようと思っていた。

―知識社会とオーケストラは、どのような関係があるのですか?
知識社会では、各個人が少数の管理者の下にあり、それぞれが分野別の専門家である。また、自分や周りの人を管理する責任があるエグゼクティブでもある。組織の形は水平組織となり、知性のみならず感性も重要な要素となってくる。
一方、オーケストラでは、指揮者の下では個々のプレーヤーが各楽器の専門家であり、自分や周りの人の演奏をよく聞きあう責任があるという意味において、エグゼクティブでもある。感性が重要な要素であることは言うまでもない。
つまり、知識社会もオーケストラもほとんど同じである、ということに着眼した。
森悠子氏は、エグゼクティブでもあるために、「純真な心を持つことが一番大事。中空にある音を“聴き合い”、「間の感覚」と 「呼吸感」 を背中で“感じ合う”」ことが必要だと提唱している。私はこれを「森メソッド」と称したい。JAOのキャンプでのオーケストラにおいてこの考えが実証されたので、将来、知識社会にも応用できると信じている。

―知識社会を乗り切るためには、オーケストラで演奏する際に必要な心構えが活かせるということですね。
そうだ。そうした訓練は、オーケストラのアンサンブルの中でしかできないということを強調したい。なぜなら、「互いに聞き合う」ということを口で言うのは簡単だが、実際実現をするのは難しい。しかし、オーケストラの一員として演奏する中で培ったこの「コツ」は、経験をすることで体得できる。普段オーケストラをやっていない人が「急にやれ」と言われても無理な話である。たとえ頭で考えてもできないだろう。

―この「コツ」を学ぶことが大事になってくるのですね。
何よりも「楽しみながらコツを学ぶ」ということが非常に重要になってくる。

知的社会を乗り切る具体論の一つとして、オーケストラをケーススタディとして検証した山口氏の論文。知性のほかに感性を属性として考慮する必要性を提唱しただけでなく、国防総省が唱える“ネットワークを中心とした環境”に対して、“個人を中心とした環境 ”の必要性を提唱した。
今後はどのような研究を進められていくのかを聞いてみた。


―今後はどのような研究をなさる予定ですか?
「森メソッド」の効果を定量的に計り、知識社会における手法と成果の関係を示すメトリクスに発展させたい。また他の学会への働きかけをして、これらのコンセプトの普及に努められたらと思っている。

―現役のみなさんやOBオケなどで活躍するみなさんにも、知識社会で活かせる「コツ」をぜひ学び続けてもらいたいですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。